映像のサリエーリ

映像ソフトとYouTubeのサリエーリ

オペラの映像ソフトとYouTubeにアップされた演奏を紹介するページです。

 

註:映画『アマデウス』、モーツァルトの伝記映画、サリエーリが登場するミュージカルやオペラについては後日、新たに設けるページ【モーツァルトとサリエーリ】の中で取り上げます。

 

サリエーリのオペラ映像ソフト

サリエーリのオペラの映像ソフトは《見出されたエウローパ》《タラール》《ファルスタッフ》の3点しかありませんが、どれも名演です。

 

サリエーリ:歌劇《見出されたエウローパ Europa riconosciuta

ルカ・ロンコーニ(演出), ピエル・ルイージ・ピッツィ (装置/衣装), リッカルド・ムーティ指揮ミラーノ・スカラ座管弦楽団, 同合唱団 ディアナ・ダムラウ (S/エウローパ), デジレ・ランカトーレ (S/セメレ), ゲニア・キューマイヤー (S/アステリオ), ダニエラ・バルチェッローナ (Ms/イッセーオ), ジュゼッペ・サッバティーニ (T/エジスト) 他

収録:2004年12月ミラーノ Erato 90295 88998 (DVD)

 

1778年8月3日ミラーノのスカラ座こけら落としに初演された歌劇《見出されたエウローパ》。台本作家マッティア・ヴェラーツィによる物語は次のとおり。テュロスの王アジェーノレの娘エウローパはフェニキア王族の末裔イッセーオと婚約したが、クレタの王アステリオに誘拐されて妻となり、子を産む。アジェーノレは姪セメレに王位を譲ることにし、イッセーオもセメレとの結婚を承諾するが、アジェーノレの死を知ったアステリオは王位継承権を主張してエウローパと幼子を連れてテュロスに向かい、嵐に遭って封臣エジストの捕虜となる。王宮に連れて来られたエウローパを見た民衆は彼女を行方知れずの王女と認め、再会したイッセーオの心にも愛情が蘇る。嫉妬したセメレはエジストと共謀してアステリオを死刑にしようとするが、イッセーオはエジストを倒してアステリオを解放する。イッセーオとエウローパは互いの恋を諦め、イッセーオはセメレと結婚して新王となり、アステリオとエウローパはクレタへの帰還を決める。

これは約3年間の改修を経てスカラ座がリニューアルオープンに行った蘇演の映像で、気鋭の歌手たちが気迫に満ちた演奏を繰り広げる。エウローパ役のディアナ・ダムラウとセメレ役デジレ・ランカトーレは共に夜の女王より高い超高音と超絶技巧を駆使し、喝采を浴びる。初演でカストラートが務めた役を男装して演じるゲニア・キューマイヤーとダニエラ・バルチェッローナも情感豊かに真摯な歌唱を繰り広げ、エジスト役のテノール、ジュゼッペ・サッバティーニも第2幕のアリアで凛とした歌唱を聴かせる。ルカ・ロンコーニの演出、ピエル・ルイージ・ピッツィの装置/衣装は簡素ながら洗練され、アレッサンドラ・フェッリとロベルト・ボッレをエトワールとするバレエも美しい。この上演映像でサリエーリをグルックに続くイタリア・オペラの巨匠と納得する人も多いだろう。その意味でも歴史に残る快挙と言える。 (『レコード芸術』音楽之友社、2017年4月号の拙稿を改訂)

 

サリエーリ:歌劇《タラール Tarare

ジャン=クロード・マルゴワール指揮ドイツ・ヘンデル・ゾリステン ハワード・クルック (T/タラール), ジャン=フィリップ・ラフォン (Br/アタール), ゼハヴァ・ガル (Ms/アスタジー), アンナ・カレブ (S/スピネット), エーバーハルト・ローレンツ (T/カルピージ), ハンヌ・二―メレ (B/アルタモール) 他

収録:1988年6月シュヴェツィンゲン音楽祭 ARTHAUS MUSIK 100557 (DVD) 日本語字幕付き

 

サリエーリのフランス・オペラ最大のヒット作。1988年シュヴェツィンゲン音楽祭の復活上演を収めたこのDVDは、悲劇と喜劇を混合した稀有な作品の全貌と真価を明らかにする。物語は皇帝と兵士とすべく、神々が二人の人間を創造するプロローグで始まる。彼らは皇帝アタールと臣下タラールとなり、タラールに嫉妬した皇帝は彼の妻を誘拐して後宮に幽閉する。妻を取り戻そうと黒人に変装した主人公は死刑判決を受けるが、兵士の反乱で救出され、民意を失った皇帝は自殺する。「兵士が王となり、暴君が死ぬ」「人間の価値は性格で決まる」との教訓は、台本作家ボーマルシェがフランス革命前夜に発した政治的メッセージと解釈しうる。ジャン=ルイ・マルティノティの演出は喜劇的表現に優れ、誇張された所作と歌手たちの好演も相まって観る者を飽きさせない。嬉しい日本語字幕付き。

詳しい作品解説は「水谷彰良の聴くサリエーリ」第10回『歌劇:タラール』 をご覧ください。

 

サリエーリ:歌劇《ファルスタッフ Falstaff》

アルノルト・エストマン指揮シュトゥットガルト放送交響楽団 ジョン・デル・カルロ (B-Br/ファルスタッフ), テレーザ・リングホルツ (S/フォード夫人), リチャード・クロフト (T/フォード氏), デロレス・ジーグラー (A/スレンダー夫人), ジェーク・ガードナー (B-Br/スレンダー氏) ほか 

収録:1995年シュヴェツィンゲン音楽祭 Arthausmusik 100023 ( DVD) 日本語字幕付き

 

シェイクスピアの喜劇『ウィンザーの陽気な女房たち』(1600~01) を原作とするサリエーリ後期のオペラ・ブッファ。1799年1月3日ヴィーンのケルントナートーア劇場で初演された。台本作家カルロ・プロスペロ・デフランチェスキ (生没年不詳) による物語は後のヴェルディ作品よりもシェイクスピアに忠実で、大酒呑みで太っちょの好色漢サー・ジョン・フォールスタッフが女たちの仕掛ける三つの悪戯に翻弄される。サリエーリの音楽は軽快で優美さに満ち、喜劇的センスの良さが随所に光る。アリアも民衆的なリートからオペラ・ブッファやオペラ・セーリアまで、さまざまな様式が自在に使われる。あらすじは『サリエーリ  生涯と作品』第5章をご覧ください。嬉しい日本語字幕付き。

 

 

YouTubeで見るサリエーリとその作品

 

YouTubeを通じて大量の映像を楽しむことができます。その中からお薦め映像をセレクトし、随時追加していきます。

 

2003年に『サリエーリ・アルバム The Salieri Album』(Decca) を録音したメッゾソプラノ、チェチーリア・バルトリ (Cecilia Bartoli) が2004年に制作したドキュメンタリー「なぜサリエーリなの、バルトリさん? Perchè Salieri, signora Bartoli?」です。「なぜサリエーリを歌うの?」としつこく訊く青年に対し、自分の演奏で音楽の素晴らしさを伝える内容で、33:47から《アルミーダ》序曲の音楽をバックに名優ジェラール・ドパルデュー (Gérard Depardieu) の演じるサリエーリが登場します。『サリエーリ・アルバム』については「聴くサリエーリ」第6回『オペラ・アリア集』(1) でお読みください。

 

ソプラノのディアーナ・ダムラウ (Diana Damrau) が2008年にリリースしたCD『ブラヴーラ・アリア集 Arie di bravura』(Virgin Classics) の録音風景です。サリエーリの曲の解説は「聴くサリエーリ」第7回『オペラ・アリア集』(2) でお読みください。映像で見る夜の女王のアリアとサリエーリのコロラトゥーラ・アリアは格別です!

 

2013年11月、クリストフ・ルセ指揮レ・タラン・リリクがヴェルサイユ王立歌劇場で行った《ダナオスの娘たち Les Danaïdes》演奏会形式の上演映像です。これはサリエーリがパリのオペラ座で初演したフランス・オペラの第1作。物語はギリシア神話に基づき、ダナオスの50人の娘が父の兄弟アイギュプトスの息子50人を新婚の床で殺すよう命じられが、長女イペルムネストルは愛するランセを逃がし、夫を殺した娘たちが地獄に落ちるという悲劇。成立過程は『サリエーリ 生涯と作品』第3章、作品解説は「聴くサリエーリ」第8回『歌劇:ダナオスの娘たち』 をご覧ください。

 

2015年12月16日にモスクワのアレクセイ・リブニコフ劇場が行った《はじめに音楽、次に言葉 Prima la musica e poi le parole》の上演映像です。この作品は1786年2月7日、イタリア・オペラとドイツ・オペラの優劣を競わせるため、モーツァルトのジングシュピール《劇場支配人》に続いて同じ会場のもう一つの舞台で初演されました。作品解説は「聴くサリエーリ」第9回『歌劇:はじめに音楽、次に言葉』をご覧ください。

 

2018年8月5日ニューヨークのデッラルテ・オペラ・アンサンブル (Dell’Arte Opera Ensemble) が行った歌劇《花文字 La cifra》アメリカ初演の上演映像です。この団体はオペラ歌手育成を目的に2000年に設立され、サリエーリ《ファルスタッフ》のアメリカ初演も行っています。演奏は11;15から始まり、英語字幕を設定できます。

これは旧作 《羊飼いの貴婦人》(1780年) の台本をダ・ポンテに改作させた喜歌劇で、1789年12月11日にブルク劇場で初演され大成功を収めました。『サリエーリ  生涯と作品』第4章からあらすじを転記しておきます。

──舞台はスコットランド。伯爵令嬢オリンピア[ソプラノ]は、わけあって少女の頃、宝石を隠した小箱とともに田舎に住む農夫ルスティコーネ[バス]に預けられ、エウリッラの名前で生活していた。ルスティコーネには実の娘リゾッタ[ソプラノ]がおり、彼女はエウリッラと容姿が似ていたが、気性は心優しいエウリッラと正反対だった。ある日のこと、行方不明のオリンピアを探す伯爵の友人フィデリング卿[テノール]が仲間と狩に出て農夫たちに出会い、良く似た娘がルスティコーネの家にいると教えられる。フィデリング卿が行方不明の娘に恋していると察した狡猾なルスティコーネは、これがお探しの娘です、と言って自分の娘リゾッタを彼にあてがおうとする。フィデリング卿はその言葉をいったん信じるが、エウリッラの気品ある物腰を見て疑いを抱く。やがて宝石箱が見つかり、底に隠されていた書き付けでルスティコーネの嘘がばれてしまう。怒ったフィデリング卿は彼を罰しようとするが、涙ながらにルスティコーネをかばうエウリッラの姿に心打たれ、すべてを許す。

 

《皇帝ミサ Kaisermesse》の別名でも知られるサリエーリの《ミサ曲 ニ長調 Missa in Re maggiore》(1788年)。編成は混声四部合唱と管弦楽。1783年にヨーゼフ2世が壮麗な教会音楽を廃止した影響もあり、独唱を使わず和声的合唱を多用していますが、サリエーリの名作として現在もヴィーン宮廷礼拝堂聖歌隊のレパートリーとなっています。これは2006年10月ダニエル・キュイエル (Daniel Cuiller) 指揮のアンサンブル・ストラディヴァーリア (Ensemble Stradivaria) とアルシス・ブルゴーニュ合唱団 (Choeur Arsys Bourgogne) が行った演奏会の映像です。

 

サリエーリの《ピアノ協奏曲、ハ長調》 (1773年) を自筆譜を見ながら鑑賞できます。演奏はピエートロ・スパーダ (Pietro Spada) のピアノ&指揮、フィラルモーニア管弦楽団。作品解説は「聴くサリエーリ」第4回『オルガン協奏曲と二つのピアノ協奏曲』をご覧ください。

 

サリエーリの《ピアノ協奏曲、変ロ長調》(1773年) を自筆譜を見ながら鑑賞できます。演奏はピエートロ・スパーダ (Pietro Spada) のピアノ&指揮、フィラルモーニア管弦楽団。作品解説は「聴くサリエーリ」第4回『オルガン協奏曲と二つのピアノ協奏曲』をご覧ください。

 

《スペインのラ・フォリアの主題による変奏曲 Variazioni sull'aria detta La Follia di Spagna》(1815年) はサリエーリ最後の大規模な管弦楽曲。これは2019年6月14日にラインハルト・ゲーベル (Reinhard Goebel) 指揮ケルンWDR交響楽団(旧・ケルン放送交響楽団)が行った演奏会の映像です。作品解説は「聴くサリエーリ」第3回『シンフォニア集と変奏曲集』をご覧ください。